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| 女性向け二次創作小説置き場。 初回【About】必読です。 |
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愛してるなんて言われてもわからない。
そんな感情、見えないんだからわからない。
愛が目に見えるものなら、私、こんな風にならなかったのに。
私は愛せない人間だった。
自分以外の人間はいつだって他人でしかなかった。
入れ替わり立ち替わりする恋人に握られる掌でさえ発狂しそうな程の抵抗を感じる。
囁かれる「好き」だとか「愛してる」だなんて言葉は誰と体を重ねても何の実感も伴わずに、いつもどこか異国の言葉のように音声だけが私の耳をすり抜けていった。
自分以外の他人を愛するという感情が私にはわからなかった。
だからこそ、初めて彼女たちを見た瞬間に私の頭の中で何かが弾けたのだった。
それはかつてない程の衝撃。体が震える程に感じた羨望だった。
あの二人と初めて会ったのはレコーディングスタジオの静かな通路だった。
よく似た顔の弟を後ろに従えて女王様然と振る舞う姿が得も言われぬ程に愛くるしかった。
私の肩にも届かない程の背丈で彼女は頭のリボンを揺らしながら「初めまして」と小首を傾げて言った。
少し吊り上がった目の形や口角が彼女の意志の強さを窺わせた。
「巡音さん、だよね?鏡音リンです。こっちは弟の鏡音レン。ほら、レン挨拶して」
彼女は半歩下がった位置にいる弟を振り向いて促す。
レンと呼ばれた少年はよく通る声で「初めまして」と繰り返した。
言葉を発した少年もまた意志の強そうな眼をしていたけれど、姉に向ける眼差しが慈愛と呼べる優しさに満ちていたので、二人のバランスは彼の姉に対する敬意や愛情で保たれているのだなと納得した。
彼は決して臆病なわけでも小心なわけでもなく、ただ昔からの習慣で姉を慕い、敬っているが故に彼らの間には主従関係のようなものが成り立っているのだった。
と、一瞬にしてそこまで巡った思考回路を少年が差し出した右手が遮る。
否、正しくはそれを握り返した瞬間の彼女の視線が私の思考を混乱させる。
「よろしくお願いします」
ごく当たり前のように差し出された手を、多少の逡巡はあったものの上手く誤魔化して握り返した。
「こちらこそよろしくね」
その瞬間、少年の斜め後ろに立っていた彼女の眦(まなじり)がきりきりと吊り上がり、遮るように少年の腕を掴んで引いた。
「それじゃあ、あたしたち今からレコーディングだから」
そう言って弟の手を、つい今し方私が握ったその手、まだ男の掌と呼ぶには小さくて柔らかなその手を彼女は自らが握って廊下を駆けて行った。
その光景は何やら私の瞼の裏にやけに鮮明に焼き付いてしまい、置き去りにされた通路の真ん中で立ち尽くして思案に暮れた。
自分が何に対して違和感を感じたのか、それに気付いたのは遅くに自宅に帰って来て疲れた体をバスタブに沈めている時で、思い付いた瞬間に思わず発した間抜けな声が恥ずかしいぐらいに浴室に響いた。
「ああ、手、だ」
思春期に差し掛かった多感な年頃の姉弟が手を繋ぎ合う光景。
それが私に大きな混乱をもたらしたのだった。
小さな白い指が意思を持った生き物のように互いにしっかりと組み合わされる。
いくら家族とは言え、あんな風にいやらしく指を絡ませたりするだろうか。
そう、彼女たちはあの時まるで恋人同士がするように互いの指を絡ませて走り去ったのだった。
まるで私に見せつけるかのごとく。そして、そこに見え隠れする彼女の嫉妬と執着。
あれは一体何なのだろう。あの二人は一体何なのだろう。
自分以外の人間に触れることすらままならない私にとってあの二人は異質だった。
私とはまったく違う生き物のように思えた。
それが彼女と私の出会い。
愛を知らない私が、愛に溺れた彼女に出会った記念すべき、一日。
そんな感情、見えないんだからわからない。
愛が目に見えるものなら、私、こんな風にならなかったのに。
私は愛せない人間だった。
自分以外の人間はいつだって他人でしかなかった。
入れ替わり立ち替わりする恋人に握られる掌でさえ発狂しそうな程の抵抗を感じる。
囁かれる「好き」だとか「愛してる」だなんて言葉は誰と体を重ねても何の実感も伴わずに、いつもどこか異国の言葉のように音声だけが私の耳をすり抜けていった。
自分以外の他人を愛するという感情が私にはわからなかった。
だからこそ、初めて彼女たちを見た瞬間に私の頭の中で何かが弾けたのだった。
それはかつてない程の衝撃。体が震える程に感じた羨望だった。
あの二人と初めて会ったのはレコーディングスタジオの静かな通路だった。
よく似た顔の弟を後ろに従えて女王様然と振る舞う姿が得も言われぬ程に愛くるしかった。
私の肩にも届かない程の背丈で彼女は頭のリボンを揺らしながら「初めまして」と小首を傾げて言った。
少し吊り上がった目の形や口角が彼女の意志の強さを窺わせた。
「巡音さん、だよね?鏡音リンです。こっちは弟の鏡音レン。ほら、レン挨拶して」
彼女は半歩下がった位置にいる弟を振り向いて促す。
レンと呼ばれた少年はよく通る声で「初めまして」と繰り返した。
言葉を発した少年もまた意志の強そうな眼をしていたけれど、姉に向ける眼差しが慈愛と呼べる優しさに満ちていたので、二人のバランスは彼の姉に対する敬意や愛情で保たれているのだなと納得した。
彼は決して臆病なわけでも小心なわけでもなく、ただ昔からの習慣で姉を慕い、敬っているが故に彼らの間には主従関係のようなものが成り立っているのだった。
と、一瞬にしてそこまで巡った思考回路を少年が差し出した右手が遮る。
否、正しくはそれを握り返した瞬間の彼女の視線が私の思考を混乱させる。
「よろしくお願いします」
ごく当たり前のように差し出された手を、多少の逡巡はあったものの上手く誤魔化して握り返した。
「こちらこそよろしくね」
その瞬間、少年の斜め後ろに立っていた彼女の眦(まなじり)がきりきりと吊り上がり、遮るように少年の腕を掴んで引いた。
「それじゃあ、あたしたち今からレコーディングだから」
そう言って弟の手を、つい今し方私が握ったその手、まだ男の掌と呼ぶには小さくて柔らかなその手を彼女は自らが握って廊下を駆けて行った。
その光景は何やら私の瞼の裏にやけに鮮明に焼き付いてしまい、置き去りにされた通路の真ん中で立ち尽くして思案に暮れた。
自分が何に対して違和感を感じたのか、それに気付いたのは遅くに自宅に帰って来て疲れた体をバスタブに沈めている時で、思い付いた瞬間に思わず発した間抜けな声が恥ずかしいぐらいに浴室に響いた。
「ああ、手、だ」
思春期に差し掛かった多感な年頃の姉弟が手を繋ぎ合う光景。
それが私に大きな混乱をもたらしたのだった。
小さな白い指が意思を持った生き物のように互いにしっかりと組み合わされる。
いくら家族とは言え、あんな風にいやらしく指を絡ませたりするだろうか。
そう、彼女たちはあの時まるで恋人同士がするように互いの指を絡ませて走り去ったのだった。
まるで私に見せつけるかのごとく。そして、そこに見え隠れする彼女の嫉妬と執着。
あれは一体何なのだろう。あの二人は一体何なのだろう。
自分以外の人間に触れることすらままならない私にとってあの二人は異質だった。
私とはまったく違う生き物のように思えた。
それが彼女と私の出会い。
愛を知らない私が、愛に溺れた彼女に出会った記念すべき、一日。
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